スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
最近、私の中でAppropriate Technology(適正技術)なるものが熱い。

渡米以来、縁あってMITのD-Labという途上国向けのものづくりを教える授業にかかわっているのだが、聞けば聞くほど、この授業が推進する「Appropriate Technology」は、日本でコンサルの仕事をしていた時に感じていた問題点に応えている気がしている。

Appropriate Technologyとは、テクノロジーが使われる現場の社会的・環境的・文化的要素を考慮したうえで、その場に最もフィットするテクノロジーを開発するという、いわばエンジニアリングの原点に立ち返るようなコンセプトの分野だ。
当たり前のことを当たり前にやるというこの分野が別枠でくくられているのは、たぶん環境であったり、途上国の社会益向上であったり、経済原理の外枠にあるものを考慮の対象に含めているからであり、またSocial Responsibilityなるものが大いに流行った事で、有名大学や大手企業がこぞって取り組むようになったからだろう。

それが工学分野として革新的なものなのか(途上国の地元の大工さんがものづくりに一工夫加えるのと、MITの学生がアフリカに行って手作りポンプを開発するのではなにが本質的に違うのか)という点については議論の余地があると思うが、少なくともその教育的な意味合いはとても大きいと思う。

まず、適正技術は、「利用者のニーズに合わせて、そこから逆算してモノを作る」という姿勢を半強制的な形で学生に教えることができる。

---
コンサルティングの会社でも、UNDPでも、製品のマーケティングの仕事に多くかかわってきた。

※意外に思われるかもしれないが、マーケティングの要は実は商品が作られる前の段階にある。顧客調査等を通じて見えてきたニーズに応える商品が作れるか否か、でほとんどの勝負は決まり、その後の広告宣伝や販売戦略はもちろん超大事なのだが、最後は商品力がなければ、どんな製品も売れない。(商品力があっても、販売戦略の失敗によって売れなかった話は山ほど聞くが、商品力がないのに、販売戦略が功を奏して大ヒットを飛ばした、という話は聞いたことが無い。)

仕事を通して一番もどかしかったのが、商品開発を行うエンジニアの思考が、どうしても技術から出発してしまう点だった。
顧客のニーズを聞かないわけではない。真剣に参考にするし、ニーズに合わせて、スペックや価格の調整を最大限しようという姿勢はひしひしと伝わってくる。
でも、発想の根幹となっているのは、やっぱり「X,Y,Zという技術を使い、○○な製品を作る」というおおまかな設計図であって、一旦、製品の青写真を全部作ってから、消費者調査をして、あまりに駄目な商品はふるい落として、残った商品は顧客からのフィードバックを織り込んで改善して売り出そう、という姿勢で製品作りは行われている。
そのものづくりのプロセスと、顧客の声に基づいて、ゼロから青写真を考えるというプロセスは、似ているようでいて、根本的に違う。うまく言葉にできなくてもどかしいが、絶対的に違うという確信がある。そして、その違いは悲しきかな、商品力の差になって現れる。
個人的に、イノベーションは本来、顧客ニーズを見つめ続けて考え抜く作業の中にこそあるのではないかと思っている。プロダクトアウトで成功している製品も、すべてはこの作業から出発しているのではないだろうか。
日本の電機メーカーが不況な理由はいくつもあるが、そのうち一つは、この「顧客のニーズを見つめ続けて考え抜くイノベーション力」が衰えたことにあるのではないだろうか。
---

回り道になってしまったが、そんな課題を感じていたため、この適正技術の教育的効用にはいたく感動した。
途上国では、技術者主導でものを考えてられないほどにぐんと制約条件が増える。そもそも圧倒的にコストが安くないと売れない上に、劣悪な環境にも耐えられるような丈夫な作りになっていないといけない。電気がない地域もあるし、使える材料も限られる。せっかく良い製品が作れても、現地の風土に合ってないと、全く使ってもらえない可能性もある。

そんな制約下で、考え抜くことを強制された学生は、社会に出て何百倍も複雑な製品を作ることになっても、ものづくりの原点を忘れないでいられるのではないだろうか。そうしたら、ゆくゆくは日本の商品開発力も向上するのではないだろうか。

そんな壮大な妄想をふくらませつつ、今日も心ひそかにAppropriate Technologyの可能性に熱くなっている。


スポンサーサイト
Business | コメント(5) | トラックバック(0)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
おもしろいテーマですね。
適正技術自体、途上国への技術「移転」という援助畑から発展した概念みたいですね。社会と技術のあり方というより広い文脈で一般化されているようですが。先進国で使っているような小難しい技術がなくても、充分現地のニーズは満たせるんだというような議論ですよね。先進国内だけでみると、現代的な消費社会・科学技術信仰へのアンチテーゼ的要素が入り込んでいるようにも見えます。

工業製品の場合、ユーザーのニーズと技術の関係って鶏と卵の関係のようなところがあって、特に大きな企業の製品開発になると、製品の構成要素をゼロベースで見直すのは中々難しいところがある気がします。特に日本の場合、(偏見かもしれませんが)リバースエンジニアリングで技術を鍛えてきたところもあるので、既に製品のひな形みたいなものが先にぽんと存在していて、それをニーズに併せて調整していくという思考様式がベースになっちゃうんでしょうね。

日本の entrepreneurship とはどうあるのが望ましいのかという議論と何となく結びついているのかもしれません。いろいろ示唆に富む議論だと思ってます。

MPA/IDのカリキュラムって(1年目は)結構ハードだと聞いてますが、G-Labと掛け持ちされているというのは凄いですね。頑張ってください!!
No title
ラテンでお店周りやお宅訪問をしていると、本当に目からうろこな事ばかりです。

ちなみにラテンのマルチルームオーディオというのは、家の窓を全部開けて、フルボリュームで音楽を流すことです。家のどこでも音楽が聴こえます(笑)
No title
Outernationjpさん>

いつもコメントありがとうございます!工業製造のお話、ご指摘ありがとうございます。確かにおっしゃるとおり、大企業だと既存の生産設備などの制約下でなにができるか、という話になるので、ゼロベースは難しいですよね。よく企業の方には、途上国向けのものづくりは基礎コストが高い日本の会社には無理だと言われるのですが、それもこの既存の設備・プロセス、それにかかる最低限の人件費などがネックになっているのだろうなあ、と想像しています。

とくさん>

コメントありがとうございます!まさに消費者のニーズの真っ只中で仕事をしてらっしゃるようでうらやましい限りです。寒すぎて窓を全開にできないボストンでは、例のマルチルームオーディオをBestBuyに探しに行っているのですが、なかなか見かけないのです、、、残念なことに。マルチルームどころか、ワンルームしかない私は、さしあたりAmazonでウーファーだけがWirelessになっているバージョンのスピーカーセットを買おうかと思っています。
No title
りくさん

例のブツ、MiamiとNYのBest Buyで見かけましたよー!

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。