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市場のニーズをよく調査し、ニーズに沿って製品を開発するマーケットインのアプローチと、自社の強みや特定の技術を核に、製品を作って世に問うプロダクトアウトのアプローチと、どちらのほうが良いモノができるのか、ずっと結論が出ずにいた。
が、最近、ようやくどちらが良いという話なんかではなく、「当然、売れる製品は、顧客の根源的なニーズ(口先のニーズやトレンドではない)に応えてないといけないし、その製品は自社の強みを生かしまくって、世界で一番になれないと、実際のところ勝てないよね。」という当たり前な結論に至った。
が、当たり前なようでいて、忘れがちなので、メモしておこうと思う。

最近、偶然が重なって、ポテチ(というか野菜チップス)と鍋と、2つの製品の開発秘話を読んだ。
野菜チップス: カルビー、たった1人で30億円を稼ぐ男
鍋:   バーミキュラ開発ストーリー

カルビーのベジップスは野菜本来の美味しさにこだわり、油と塩だけで味付けしたチップス。バーミキュラは、ホーロー鍋と無水調理鍋の特性を合わせ、素材本来の味を引き出すことにこだわった鍋である。
ベジップスは発売以降、一部で販売中止になるほどの大ヒットになっている。バーミキュラはもっとすごく、ネット直販しかしてないのに、製造が注文に全く追いつかず、今や15ヶ月待ちというほどに売れている。

売れているという実績以上にすごい、すごいと思っているのが、その開発プロセスだ。

1. マーケットイン: 普遍的な価値を選び取る
2つの製品とも開発前に顧客の市場調査を特にしているわけではない。まあ一般的な調査くらいはしていたかもしれないが、アンケートでみんなが野菜本来の味を引き出すチップスを求めてると言ってました、とか、「今の鍋だと素材本来の味が引き出せなくて不満で。。。」と訴える人が続出しました、といった状態ではなかっただろう、と思う。

でも、素材本来の味をおいしくいただけるという「価値」は、とても普遍的な価値だ。それにいくら払うかはともかく、「お金を払ってもいい価値だ」と思う人はとてもたくさんいる。
そこが、「消費者はこれから絶対に3Dでテレビを見たがるはずだ。」とか「ユーザーは0.2mmよりも更に細いペンを求めているはずだ。」といった、よく聞くプロダクトアウトの製品とは違う。
きっと野菜チップスの人も、バーミキュラの人も、自分のプロダクトの味に心の底から価値を感じていたし、それがうまく人に伝わるか、というところに不安はあっても、一度伝わったら、絶対に誰もがその価値を共有できると確信していたのではないかと思う。

2. プロダクトアウト: 自社が世界一になれるマーケットで勝負している

一方、2社とも自社の強みをよく自覚している。カルビーのほうは自明すぎてあまり言葉になっていないが、「チップス」にこだわったのは、そこなら自社が勝てる、世界で一番になれると、社内で共有されていたではないかと思う。バーミキュラのほうは町工場だということもあって、冒頭から何度も「自社の特長、自社の設備でできること」「自社が世界一になれること」を意識した記述が出てくる。「マーケットイン」一辺倒で、さつまいもが一番おいしいのは焼き芋です、だからカルビーで焼き芋を発売しましょう、とか、素材の味を引き出すなら鉄板焼きです。だから愛知ドビーで鉄板を作りましょう、とはならない。そのバランスがうまい。

3. ぶれない
次に2人ともすごいなあ、と心底思うのが、価値を選び取った後に全くブレていない事だ。
野菜チップスは開発に7年、鍋は3年かかっている。
開発途中に価値がぶれたり、増えたり、妥協を迫られたり、といったことは無数にあったに違いないと思う。

誘惑その一は、ほかの価値に浮気する事。
「野菜チップスの不満の一つは高いカロリーです。低カロリーの油を使いましょう。」
「サツマイモよりムラサキイモのほうが健康に良いです。だからムラサキイモを使いましょう。」
「鍋の底がでこぼこしていると使いにくいです。だから、味は少し落ちるかもしれないけど、使いやすさを優先して底は平らにしましょう。」
「ホーロー鍋の不満の一つは重い事です。だから、軽くする工夫もしましょう。」
・・・
上記のどれも間違ってないし、どれも普遍的な価値(健康、カロリー、使いやすさ)に言及してる。
私ならすぐにふらふらっと心が動いてしまうと思う。
でも、ベジップスもバーミキュラも「素材の味」から一切ぶれてない。ほかのポイントも考慮しているが、優先順位はいつも絶対的に素材の味が一番だ。ブランディングもマーケティングもそこは一貫している。
当たり前、と言われるかもしれないけど、現実的に3年とか7年の開発プロセスで一貫性を保つのは並大抵のことじゃないと思う。

妥協という誘惑もある。
ベジップスの人はこだわりの種を選んだだけでなく、自分で中国まで植えに行った。
バーミキュラの人は、鍋の密閉性を高めるのに2年近くかけている。
普通のビジネス感覚でやっていたら、とっくに妥協していたと思う。
更に言えば、現実的に物事を進めるためには、大事じゃないポイントについてはどんどん妥協していかないとなにも動いてなかったのだろう、とも思うのだ。だから、核は絶対に妥協しないけど、ほかは柔軟に妥協する、というセンスも必要になってくる。「和と調整」が尊ばれる日本でどれだけ大変だったのだろう、と想像するだけでため息がでる。

4. 価値を信じ続ける確信と、現実を直視する力を持ち合わせる
もう一つ、実は一番危険なんじゃないかと思っているのが「偏屈になる」誘惑だ。
昔、「低音域の音にあわせて震えるヘッドフォン」なるものを開発した人が、社内で製品化させてくれ、と訴えるプレゼンに立ち会った事があった。なかなか面白いコンセプトだったが、つけていても「ちょっと違和感があるな。」という以上の感想はなかった。音楽好きを集めたフォーカスグループインタビューでの評判も可も不可もない感じだった。そんなこともあって、製品化は見送られた。
開発した人は心底怒っていた。「これを出せば絶対に流行るのになんでつぶすんだ。」と食って掛かっていた。プロダクトもマーケティングの構想も明確に練られており、どれも筋はとてもよく通っていた。

今振り返って思うのは、その人のプロダクトに欠けていたのは「ヘッドフォンが振動する事によって音が深まる」という約束を本当にこの製品で実現できているか、についての冷静な判断だったのだろう、と思う。コンセプト自体は悪くなかったし、そういう製品が本当にできたら大ヒットになる可能性もあったと思う。でも、(音楽音痴の私が判断するのもおこがましいが)彼のヘッドフォンでは「音が深まる」感じがしなかった。最後まで、彼はそんなはずはない!と言っていたけど、でも、彼のプロダクトは「本物」じゃなかった。

ビジョナリーカンパニー2」にストックデールの逆説というくだりがある。
要約すると、勝利を信じ続ける確信と、今の一番厳しい現実を直視する力の両方を持ち合わせなければならない、と書いている。

自分自身も含めて、いろいろな製品開発の現場を見ていると、この2つを持ち合わせている人は極めて少ないと思う。
今のプロダクトを盲目的に信じきるか、もうこの道はないとアイディアそのものを捨て去るか、のどちらかにすぐに振れてしまう。いろいろな会社がピボットできない、あるいはピボットしても失敗するのは、この「ストックデールの逆説」ができないからなのではなかろうか。

とはいえ、いざ実行に移すとできないことだらけなのだが、7年越しくらいにようやくまとまった理解に至ったので、久々にブログを書きました。
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