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世界中で働き口が減る時代

2011/10/28 Fri 00:31

今日、交渉術のクラスで1980年代のGMの労使交渉のドキュメンタリーを見て、ふと感傷的な気分になった。

毎日、同じ職場に行って同じ仲間と、「おれも資本社会の歯車の一つだぜ」と言ったかどうかはわからないけど、生産ラインで働く時代。
組合に加盟し、経営陣と賃金を交渉しあっていた時代。
毎年毎年の年収が上がり続けることが保証されていた時代。
世界中で、一つの会社に何十年と勤めることが当たり前だった時代。

映画から30年たった2011年の今、もうこの時代は終わったんだ、となぜだかはっきりと実感した。

今学期、主に途上国での非正規雇用について教えるInformal Economyの授業をとっている。
途上国のGDPの実に3割強、雇用の数で言うと6割程度が、非正規雇用によって支えられている。
非正規雇用はどんな仕事かって?
産業そのものが非正規な「Informal Sector」の4大産業は、街頭行商人(Street Vender)、ゴミ拾い(Waste Picker - ペットボトルなどリサイクルできるゴミを拾ってきてリサイクル業者に引き渡すことでお金をもらう)、メイド(Domestic worker)、内職(Home-based worker)。
正規な会社で働く非正規雇用は、日雇い労働者や短期契約の労働者を指す。
たとえば成長著しいインドでは、雇用の9割がなんと非正規雇用者。
みんな明日の収入の予測がつかない毎日を送っている。

「途上国」とくくると遠い世界のことのように聞こえるけれど、正規雇用は世界中で減っている。

たとえば、欧州。反格差デモの記事を読んでいてびっくりしたのだが、スペインやギリシャでは若者の失業率が4割を超えている。

chart
日本やアメリカでも、若者の失業率が全体の2倍程度だという現状は同じだ。


たとえば日本。1980年代のまさに労使交渉の映画の頃を境に、非正規雇用(パート、契約社員など)は増え続け、今や働いている人の3人に1人は非正規雇用だ。

グラフで見るとこんな感じ:
chart2

24歳までの若者の非正規雇用率は実に5割に達する。
ちなみに、引用もとのデータ図録の次のグラフはこう続く:

chart3
少子化にもなるよね、そりゃあ。

つい先日、岡田斗司夫さんが同志社大学で、「私たちは生涯、働かないかもしれない」と題した講演をしていたらしい。概要を読んで、そうだよなあ、そういう時代になったよなあ、と思った。同時に、いささか未来が不安になった。

世界中で正規雇用が減る。いや非正規を含めても働き口が減る。これはたぶん構造的に避けられないことだ。
なぜなら、経済活動そのものが、「生産性を上げること」を目指しているから。

私たちは雇われて、生産性を更に高める機械を作る。
工場に出入りしてより効率的に生産するやり方を考える。
より少ない人数でより多くのものを作れるやり方を考え、より多くの「付加価値」を生み出そうとする。

新しいビジネスを生み出そうとするときだってそうだ。
新規ビジネスは、ほぼすべからく、既存産業を壊して、その産業からシェアを奪うことによって成長する。
別に産業革命の頃もそうだったし、ネットビジネスだってその性質は何ら変わらない。
もちろん自分のビジネスを通じて新規雇用を生み出したいと思うし、生み出すけれども、その新しい産業の「生産性」が高い以上、やっぱりより少ない雇用でいままで以上の価値を生み出している、ということになる。

矛盾だ。大いに矛盾だ。
もんもんとした悩みを上記のinformal economyの先生にぶつけたら、「世界が生産性を上げ続けないといけない、利益は最大化しないといけない」というパラダイムを転換しないと世界がもたない。」と、多少震えた声で答えが返ってきた。

なんだかんだと資本主義社会のロジックが好きな私には、先生の言うパラダイムシフトはもうしばらくは図れないような気がする。効率の悪い会社を見たら、やっぱり「生産性向上を図りましょう」と言うだろうし、新しいビジネスを考えるなら、やっぱり「既得権益は壊しましょう」と言うだろうと思う。

でも、それでも、あんな労使交渉が成立していた時代のドキュメンタリーを見てしまうと、少しだけあの時代がうらやましくなるのだ。
あーあ、天災は続くし、金融危機は長引くし、今の世界は本当に難しい。




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未分類 | コメント(7) | トラックバック(0)
コメント
No title
年齢別の経年グラフ見ると、若年層の経年変化は、90年代はすごかったけど2000年代に入ってからあんmかわってないですね。あとこれって「正規・非正規」の定義、認識の変化もありますよね。労働基本法変えない代わりに契約社員の規制ゆるくしたりするからという制度上の歪みもあると思いますが。。

アメリカでも「パラダイム変えろ」て言うなんて。ただ経済的な変化が先にあって認識があとからついてくる部分もあるでしょうから、アメリカが先頭走れなくなったら(または走る人が少なくなったら)そういうの流行るんでしょうかね。


No title
うーん、議論の仮定として
・生産性向上、およびそれに伴う生産費用低下は労働需要を増やさない
というのがあるように思いますが、
新製品を開発して新たな需要を作り出したり、
製造コストを大幅に下げてより安い価格の製品を供給したりして、
製品需要が大きく増えて、労働需要が増えるという効果もあると思います。
たとえば携帯電話やパソコンが、生産性の向上が起こらずに20年前の価格と同じままだったら、
携帯電話もパソコンも普及せず、それにかかわる莫大な雇用も創出されていなかったわけですし。


マクロな効果についての研究は知りませんが、
企業レベルの実証研究では、
生産性が上がった企業は労働需要を増やす、
というのが一般的ですし。
(生産性が高い企業ほど労働需要が高いので、この内生性の問題に対処した推計を行うと、OLSに比べて労働の係数が低くなる傾向がある)


一般に経済学で議論される生産性は、
技術進歩など所与の生産投入に対しより多くの価値を作り出せるようになることですが、
リストラとかは、
そもそもが売れない製品を作っていることが問題であって、
リストラによる雇用削減は生産性ではなく、
あくまでその製品需要の下で余剰になった労働の削減であるので、
技術進歩の意味での生産性とは違うもののはずです。
問題は、生産性向上を目指していることではなく、
生産性が低くて雇用を確保するだけの売れる製品を作れていないことのような気がします。


正規と非正規の問題は、
技術革新のサイクルが早くなって
企業もずっと同じものを作っていればよいわけではなくなったので、
解雇制限のある正規を減らす方向に動いたのが原因の一つじゃないかと思います。
技術革新のサイクルが早くなって皆の生活が便利になるというベネフィットと、
技術が陳腐化するのが早くなって雇用のVolatilityが高まって、いちいちまた就職活動しなければならなくなったりスキルが時代遅れになったりするリスクを一部の人が負うようになるというコストが両方存在していて、
そこで再就職に関して政府の支援が必要なのと、
労働需要を生み出せる企業が誕生、発展しやすい環境が大事なのではないかと思います。
No title
千先さん

コメントありがとうです。記事を書いてから思ったけど、15-24歳の正社員率が低いのはけっこう必然だから、まあこんなものなのかな、という気もしました。あと、若者の失業率が高いのは万国共通のことのようで、このグラフ一枚で雇用全般について話すのは恐れ多過ぎるな、と反省しているところ。
パラダイムシフト、と話してくれた先生は、Informal economyの権威のような先生だから決して一般のアメリカ人の見解ではないですよー。ま、でも、先頭走るアメリカが最近つらそうなのは事実かも。。。
No title
Konoさん

大変丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。おっしゃる議論のポイント、すべてその通りだと思います。
イギリスの産業革命以降の発展は、それまでの「人口が増えると全体のパイが減って貧しくなる」というマルサス理論を、生産性向上によって脱却したことから始まっていて、私も生産性向上がより大きな需要を生み出す、という理論を心から信じています。
だから、例えば日本の工場が中国に移転するというのは、中国に日本の雇用が奪われたということではなく、日本の労働者により生産性の高い仕事に集中できる機会が与えられたということで、すなわちより多くの価値を生み出し、そしてより豊かな生活を享受できるようになることにつながるのだ、という経済学の理論は、その通りだと思うし、それを促進する方向に社会が発展して行くべきだとも思っています。
ただ、ご指摘の通り、生産性向上を図る中で、「労働需要の増加」が局部に集中おり、世界の富の分配がよりいっそう不均衡になりつつあるところに、多少の不条理と申しますか、やるせなさを感じて、このような記事を書きました。
ただ、あまりにも議論が乱暴だったし、図の引用等も誤解を招きやすかったとコメントを読んで反省しました。
Konoさんのブログも拝見しました!すごくわかりやすい説明に感銘を受けました。
今後ともよろしくお願いいたします。
No title
リプライありがとうございます。ブログ、興味深く読ませてもらっています。
Shanさんとは、以前まっぴーが企画してくれた歓迎会でお会いさせていただきましたが、この人、コミュニケーション能力(と目力)がすごいな、と感心したのを覚えています。
新興国の正規雇用について
今の中国や東南アジアの新興国での工場労働者は、賃上げ圧力がすごく、引き抜きの嵐で、ジョブホッピングしたほうが給与が高まる状況です。http://bit.ly/sk24OO

インドのIT系労働者も同じような状態です。http://bit.ly/sE0ywz

先進国が辿ってきた、搾取される労働者→組合加入といった流れはある意味必要でないかなと思うのですがどうでしょうか?

事実、グローバル化の最大の勝者は新興国の国民であって、中国、インド、南米での中産階級の増加は目に見張るものがありますから。

アジア開発銀行のアジアにおける中産階級台頭レポート2010 http://t.co/k6jaSOAW 2008年の段階で人口56%、19億人が中産階級。

南米での中産階級の増加チャート http://t.co/aPNuQPIZ
No title
Genさん

丁寧なコメントありがとうございます。リンク、大変勉強になりました。確かに途上国では確実に雇用口が増えているわけですから、生産性向上→雇用増加、という構図は変わっていないのかもしれませんね。とても参考になりました!

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