スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告

くやしさをバネに

2011/05/29 Sun 03:44

スタンフォードのMBAに通うきっかけになった話をしようと思う。

受験している最中もそもそもMBAに行きたいのか、最後まで迷い、Waitlistでスタンフォードに受かった後も、正直通おうかどうか、ずっと悩んでいた。今になって思えば大変おこがましいが、当時はビジネスコンサルタント出身者がMBAに通う意味に少々懐疑的だった。

そんな風に斜に構えていた私の心を動かしたのは、実は合格者のために開かれた模擬授業での一こまだった。
授業では、中小企業を顧客と想定してサーバーを開発してみたら、実は大企業からのほうが需要があって、さて困った、というスタートアップのケースを扱った。大企業のほうが需要が強いといっても、大企業向けに売るためには、新たに営業部隊を作らないといけないし、アフターサービスもできるようにならないといけない。他の大手とも競合しなければいけない。引き続き中小企業の顧客を対象にプロダクトを改良して行くべきか、大企業に売るべく組織を作り直すか、それが授業での論点だった。

クラスの議論では、終始、「想定した顧客ニーズにプロダクトが合わなかったんだったら、プロダクトを作り直すべき。」という初志貫徹論が主流だった。コンサル出身の私も当然そっち派だった。そんなクラスに対して、先生は「プロダクトに合わせて組織を変えるべき」とはっきりと言ったのだった。

「子供が初めて自転車に乗る時、子供もそして彼らを教える大人も、その子がいつか自転車に乗れるようになることを信じて疑ってない。それが若い組織になると、私たちはなぜ「組織が学び成長する」ということが無理だと思うのか?新しいスキルは他社を買収しないと手に入らない、といった議論になるのか?」

文章におこしてみるとたいしたことのないコメントに見えるが、当時の私にはひどくその一言が刺さった。
ああ、そうだ、どんなに大きく立派に見えるものにも、始まりがあるんだ。
その始まりは、子供が自転車に乗れると信じて疑わないように、創って育てることができるんだ。
素晴らしいじゃないか、と。
立派なエスタブリッシュメントを立派と尊ぶ東海岸とは空気が違う、ここには私の知らない世界が広がってる、と思った。そうして、西海岸に来よう、と思った。

あれから1年余り。スタンフォードの1年目最後の授業を来週に控えて、私はくやしい気持ちでいっぱいだ。

MBAに来てみたら、コンサル時代とはぜんぜん違う能力と輝きを持った同級生にあふれていて圧倒された。
事業会社で働いていた人が話すその業界の裏話に比べて、私が聞きかじった業界話ってなんてうすっぺらいんだと思った。百戦錬磨のバンカーに比べて、どれだけ財務諸表の見方が甘かったんだと反省した。元バスケ選手も野球選手もいれば、自転車でアフリカ大陸縦断をした普通の女の子もいる。非営利団体とかクラブ活動なんて、一人平均一個は創設にかかわってるんじゃないんだろうかってくらい、みんな何かしら率先してやってる。どの方面で見ても、私にはできないことができる人ばかりで、しばしこの学校での自分の存在価値が疑われた。

今学期とっている、Formation of New Venturesの授業。毎回、ある会社の起業時の困難をケースで取り上げ、そのケースの主人公(たいてい創業者かCEO)を授業に呼んで、みんなで議論するというもの。はじめの数回、もう私はこのクラスで一回も発言できないんじゃないかと本気で思った。企業を一から創ることについて、私はなにも、なんにも知らなかった。

できあがったプロダクトを初めて売る時。一番目の顧客の獲得は一番難しい。SunMicrosystemsが初めて(学校法人以外の)企業クライアントを獲得するためのディールのケースで、「君ならどう売る?」と聞かれて、頭がからっぽになった。売らなかったら会社は倒産、従業員数十人はくび。でも、「もうほかのベンダーに決めたから」ときっぱり断られてる。クラスで唯一セールスの経験がある同級生が、果敢に交渉に挑戦する。でも、答えが出ない。そこへ創業者のVinod Khoslaはあっさりと「(数億円するサーバーを)タダであげたんだよ。電話で断られた後、ボストンの本社まで飛んで、本社のロビーで知ってる人にかたっぱしから電話をかけ続けたんだ。それでタダでいいし、好きに中身カスタマイズしていいから機械を導入してくれって。あの時競合の機械を入れられていたら、うちは(標準獲得競争に負けて)倒産するしかなかったからね。それに、あのプロダクトは彼らには使いこなせないって自信があったんだ。カスタマイズすればするほどうちのエンジニアリングサポートが必要になる。彼らは後継機を買うはずだって。」

Hotmailがプロダクトもできてない構想段階で、VCから資金調達をする話。20社回って断られて、ようやく興味を持ってくれた投資家。その投資家に対して、Hotmailの創業者は熾烈なネゴシエーションをする。VCのスタンダードなTerm sheetは、創業期の投資の見返りにもらうオーナーシップの比率は30%というもの。それを15%にするよう、あの手この手で交渉をし、最後はVCが折れる。「そんな理不尽な交渉をしてくる相手をどうして投資後も信用することができたの?」と投資を決めたVCの人に聞いたら、「スポーツみたいなものさ。ネゴシエーションが終わった後、本当に良いゲームをした、と相手を尊敬できた。味方として組んだら強いだろうな、と思えたから、一度投資した後の信頼は深かったよ。」

こんな話が次から次へと続く授業で、私はモノを一つも売った事がない自分が、とてもくやしくなった。

スキルがない自分がくやしい。
でも、なにより努力ができない自分がくやしい。
テクノロジーのトレンドも、医療業界の規制も、ファイナンスも、究極的にはプログラミング言語も、全部がんばれば習得できると思う。それなのにきちんと努力ができていない自分がくやしい。

25歳で不動産投資業を興し、5年で50近くのホテル物件、20近くのショッピングモール物件を抱えるまで大きくして、会社を売却したクラスメート。
「会社にいた頃、仕事に行くのが楽しくて仕方なかったんだ。社員の誰よりも早く出社して誰よりも遅く帰ってたけど、朝会社で新聞を読み始めてメールをチェックする瞬間から、夜分厚いディールの資料を作るところまで、楽しくて楽しくて、一分一秒たりとも、次のディールを考える事をやめられなかった。」
ビジネススクールでは、ライフワークバランスをとる方法を考えたいんだ、という彼は、ちょっと悲しそうに会社経営をしていた頃の話をしてくれた。
でも、私には彼が1分1秒を惜しんで仕事に打ち込む姿が頭を離れない。

20歳の時に、寮でkakaku.comのようなサイトを始めて、業界1番のサイトにして、売却をしてきたクラスメート。「最後はどれだけ詰めるかなんだ。似たような競合サイトはいっぱいあっても、彼らががんばれてない抜け穴はいくつかある。それをどれだけ愚直にがんばりきれるか。」
そんな風に彼は成功の秘訣を説明した。今は毎日楽しそうにサルサを踊る彼が言った「最後の1%の努力」という言葉が頭を離れない。

ソーシャルベンチャーの話もたくさん聞いた。Teach for AmericaのWendy Kopp, Khan AcademyのSalman Khan、スタンフォード生まれのベンチャーのKIVAもD.LightもEmbraceも話に来ていたっけ。

始めは圧倒されっぱなしだったそういう話も、最近は、話を聞いていてくやしくなるのだ。私は彼らが同い年だったころに比べて、なんて何もできてないんだろう、と。

そんな風に思うのは、きっと、See-D Contestを通じて、たくさんの素敵なクリエイターと、素敵なユーザーたちに出会ったからだろう、と思う。

西海岸に行く事を決めた1ヶ月後、「日本発で、適正技術のプロダクトやビジネスアイディアがどんどん生まれてくるようなコンテストをしましょう。」といってSee-D(シード)を立ち上げて一年。先週末、一年間の集大成とも言える発表会を開催し、9チームの「途上国向けプロダクトビジネス」のタネが発表された。

開催前後の準備と事後処理に忙殺された日々を終え、ふっと一息ついていたら、別件の残念なニュースと、発表会での子供心にあふれて楽しそうなみんなの写真と、励ましのメールとが、同時にやってきて、気づいたらひとしきり泣いてしまった。くやしくて泣いてしまった。

「やってみちゃえー」とけっこう軽いのりで始めたこの活動が、一年経って、よっぽど壮大なゴールを目指していた事をしみじみ実感した。たくさんの人の情熱とリソースを動かしてしまった一方で、まだまだまだ活動が世界にとってRelevantでないことも実感した。たくさんの才能あふれるすてきな発明の前で、自分の非力さも改めて痛感した。

「このプロダクトを、ユーザーに見せたら、いろいろフィードバックを言うと思うけど、どれが本質でどれが本質じゃないか、見分けられる?」
「このプロダクトの投資、集められる?」
「このプロダクトが、現地のニーズから浮いた夢物語にならないためには、どうすればいい?」
「持続的なビジネスモデル、考えられる?」
マーケティングの訓練を会社でずっと積んできたはずなのに、こういう質問一つ一つに、相手の目を見てまっすぐ答えを出せない自分がいて、それがすごくくやしい。

この一年で、日本でも、アメリカでも、東ティモールでも、素敵な人とたくさん出会ってしまったから、「この人みたいになりたいな。」と思う人と「この人のためになりたいな。」と思う人にたくさん会えたから、そして、「この人達と一緒だったら、ゆっくり楽しくがんばれるかな。」と思える集団(それはきっとたぶん未来出会うであろう潜在的な仲間たちも含めて)に出会えたから、くやしい気持ちを忘れずにがんばれたらな、と思う。

まず、この夏は、See-D第2回目の設計と準備を粛々と進める傍ら、一つのプロダクトと真正面に向き合ってみます。そして、新しく発見するであろう世界をめいっぱい楽しみます。

最後に、世界の本当に必要なところへ必要なモノを届けることに興味があるかもしれない皆さんへ。
いつでも、一緒にゆるゆると楽しくがんばれる仲間を募集しているので、興味があったらこのブログへメールください。





スポンサーサイト
適正技術 | コメント(8) | トラックバック(0)
 | HOME | 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。