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創造力への優しさ

2009/10/01 Thu 21:40

火曜日にボストン交響楽団(BSO)のコンサートに行った。
個人の好みになってしまうが、私はボストンのシンフォニーホールがとても好きだ。
ここで創り出される音はとにかくきれいなのだ。
オーケストラの様々な音が、ホールの真ん中で、綿菓子のように、もしくはシチューのように、ほわーんと混ざる。その音は、本当に優しくて、全身を包み込んでくれる。
世界のホールにたくさん行ったことがあるわけではないが、私にとっては、ここのホールの音が、世界で一番優しくてきれいだと思っている。

さて、そんなわけで楽しみにしていた3年ぶりのBSOのコンサート。曲目はストラビンスキーのSymphony of Psalms(なんでもストラビンスキーがBSOの50周年を記念して作曲したらしい!)とモーツァルトのレクイエム。合唱付きの曲は初めて聴いたが、思った以上に音がきれいに混ざって、大満足だった。
ほかの観客も満足だったらしく、終わってみると拍手の嵐。最後は会場中、スタンディングオベーションだった。
拍手を聞きながら、この一部は、臨時で代役を果たした若き指揮者・Shi-Yeon Sungさんへの賞賛と励ましもあったのだろうなあ、と思った。
本来は、BSO所属の指揮者James Levineが指揮をするはずだった。
それが、急な腰痛(!)で指揮ができなくなってしまい、Assistant ConductorだったShi-yeon Sungが、急遽代役を務めることになったのだ。
BSO初の女性アシスタント指揮者で、30代で、急な代役で、、、もろもろのプレッシャーを背負いながら、彼女はそれを立派に果たした。それに対して、惜しみなく拍手を送ったアメリカ市民に対して、ちょっぴり感動した。

アメリカに来てから(私の周りだけかもしれないけど)、みんな新しいもの、新しい考え、新しいチャレンジに対して、とても優しいなあ、と思う。
MITでとっているDevelopment Venturesの授業では、殊にそれを感じる。
授業では、MITの学部生から、Sloan Fellow(社会人経験を10年以上している中堅向けビジネススクールプログラム)、更にはケネディのMid Careerやラボの研究員まで、もろもろのバックグラウンドを持つ人が50人程度集まって、途上国向けのビジネスプランを練り、ビジネスプランコンテストへの出場、最終的には起業までを支援する(実際にクラスから生まれたベンチャーはすでに20社近くある。)
始めはアイディア出しからするので、最初はとてもばくっとしていて、煮ても焼いても・・・、といったアイディアも多い。(事実、私が加わったチームのアイディアも、「途上国での有機農業ビジネス?」と、なにができるのかさっぱりわからないような段階。。。)
そんなアイディアに対しても、インストラクターは本当に優しい。「Polite」(社交辞令で褒める)という意味ではなく、心から期待している様が伝わってくるのだ。すべてのアイディアに対して、前に一歩進ませるようなアドバイスをする。大学側も(かなりの部分は)優しい。ほんのアイディアの種に対しても、アドバイスからお金まで、もろもろのリソースが周りにあふれている。

どうやったら日本でもCreationに対する優しさ・寛容さが広がるのかなあ。
皆さん、良かったら知恵を貸してください!



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Kennedy School | コメント(5) | トラックバック(0)
コメント
答えになってないかもしれないですが…
> どうやったら日本でもCreationに対する優しさ・寛容さが広がるのかなあ。

これはもう「文化」なので一朝一夕には変えられないと思っています.「Creation
に対する優しさ・寛容さ」を体験した「人」を日本に「還流」させることが一番有効
なのだろう…とも思っています.

もちろん,教育現場の人間の意識も重要ですね.
なので,私自身の課題でもあります.
なんとかしないとですね
「Creationに対する優しさ・寛容さ」は最も学ぶべきことだなと思います。本当に保守的だなと感じます。日本の文化とは、Creationに対する嫌悪、という気すらします。。
一方で、日本人は過去に対して憧憬を感じます。それは、皮肉にもいつも戦国時代と明治維新であり、それはつまり制度の崩壊と新しい社会を作る八百万の神々の時代でありました。ソフトバンクも楽天もSBIも、ことあるごとに「歴史に学べ」と言いますがそれはつまり「Creationに対する積極的な姿勢を学べ」と言っている気がいつもします。。
ヨーロッパとアメリカで、毎日いやというほど金融制度改革、デリバティブ規制の積極的な議論がなされ、毎日アップデートを聞かされます。一方で日本のregulatorは静観、というより馬耳東風状態です。欧米でなされる試行錯誤、社会実験の末、なにか使える形になったものだけ輸入しようという議論が平気でなされ、それが業界団体でも政府の審議会でも当然のコンセンサスになっている事態です。違和感と憤りを感じます。


でも陸さん、ぼくは日本人としていつもここにパラドクスを感じます。日本はいい国ですし、医療は世界一ですし、みんながそれを誇りに思っています。

でも一方で、最近歴史を少し学ぶごとに、今の社会は、明治期の偉人たちが作った制度に未だに乗っかっているのだなという気がします。日本の証券市場は本質的には明治期のままです。

みなさまには遠く及ばずとも、地道にがんばります。。
No title
シゲ先生>

コメントありがとうございます!
そうですねえ、、、おっしゃるように文化はなかなか変わらないですよね。経済産業省の人とも話をしたのですが、実は日本でベンチャーを支援するための金融制度は欧米並みに整ってはいるのだとか。ただ、雇用制度として、人の流動性が担保されているわけではないし、ベンチャーやって失敗することがかっこいいとみなされる社会でもないことが広がらない理由ではないか、と話していました。
そういう考えを持つ人が、日本で少しずつ前例を作って広めていくのがきっと重要なんでしょうね。

せんさきくん>
日本は明治期の遺産で生きているという感覚、よくわかります。近々、ボストンのボーゲル塾で、日本でイノベーションを増やすためにはどうすればいいか、という議論を始めようかと話しています。また進捗があったら報告しますね!
日本の未来はせんさきくんにかかってると思うので、陰から日なたからめいいっぱい期待しています(笑)
No title
日本ってそこまでcreationに冷たかったかなぁ、とちょっと思いながら書き込んでいます。確かに商品を見る目が厳しい上に、(センスが)保守的で、財布の紐が固いという印象はありますけど(後、肩書きとかのれんまで含めてチェックしたりするとか)。

明治時代の制度設計も含めて「良いものから学ぶ」という姿勢・成功神話がある分、周りに優秀な代替物があるのに、わざわざ出来の悪い原石を磨こうという回り道をする意義を見いだしにくいのと、そういう余裕もなくなってきているのだろうと思ってます。

後、MITやハーバード等に、日本の大学がベンチャー育成講座をやりませう、という提携話を持ちかけても、自分たちの身内と同じような感覚で彼岸の学生を育てる意識があるかというとビジネスライクになるところと同じかもしれませんが(体力がある分、リスクを取る余裕はあるでしょう)。

例えばある企業の社会貢献活動の一環として「おっ、これ面白そう」なものを支援していくことが、その企業の従業員にとって「おっ、これ面白い」と娯楽(時間つぶし)の代わりになるような仕組みってどんなものがあるんでしょうねぇ。
No title
Outernationjpさん、コメントありがとうございます!たしかに、気をつけて調べてみると、日本でもけっこうベンチャーが生まれていて、一概にCreationに冷たい、というのは間違った印象を与えるコメントでしたね。

ただ、あくまでアメリカとの比較でですが、日本は新しいモノが生まれるプロセスが、既存の企業の中で起こるケースが多いのに対して、アメリカでは新規にビジネスを立ち上げるプロセスで生まれるケースが多いようには感じます。そういう意味で、アメリカのほうが「新規参入者」には優しい、もしくは、そういうものを支援する制度が名実ともに整っている、ということでしょうか。

また勉強を重ねて新しい発見があったら適宜ブログにアップするようにします。
またぜひアドバイスいただけるとうれしいです。

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